ポピュラス

華の土曜日。


約束の時間より2時間も早く起きてしまった僕は、
既にテンションが高かった。
風呂に入り、冷えた体を温め、
借りていたビデオを返しにいく。
準備が整い終わる頃、
約束の時間より30分遅れてセクシーがやってきた。


ダレるのを恐れて、ネタの確認も早々に
服を着替え始める。
今日はスーツだ。
ネクタイを締めると気分も引き締まっていく。


すっかり寒くなった外は、
今にも雨が降りそうな曇り空。
しかし二人の心は晴れ渡っている。
今日は1日中撮影だ。


100円均一の店と大型スーパーに寄り
撮影に必要な小道具を用意する。
テンションの高い二人は予定には無かった小道具も次々と買っていく。
とにかく楽しくてしょうがなかった。


撮影場所は田んぼ。
幸いにも少し車を飛ばせば周りは田舎だ。
理想の撮影場所もスグに見つかった。
大きいタニシが沢山いるドブの近く。
稲は全て刈り取られていた。


リハーサルは念入りだ。
季節はもう冬。陽が落ちるのが早い。
逸る気持ちを抑えつつ、リハーサルは順調に進んでいく。
得意の記憶術でセリフと流れをスグに覚えて、タイミングを探る。
今日の撮影で一番重要なのはタイミングだ。
何度目かのリハーサルのあと、
完璧にタイミングを掴んだ頃には2人のテンションは最高潮に達した。


カメラの赤いランプが点滅した。
最初は僕は映らない。
パンした所にマイクを持ったスーツ姿の僕が立っているのだ。
周りを映しているセクシーの手は心なしか震えている。
失敗は許されない。
否が応にも緊張感が高まる。
カメラのパンが始まった。
ゆっくり、ゆっくり、
セクシーがカメラを動かす。


そこでカメラの充電が切れた。
撮影時間2秒。
ガッカリしたから帰りにイタリアンを食べた。
温かいクラムチャウダーが冷えた体をまた温める。
サーモンとハムのサラダはもちろん玉葱抜きだ。
色々な野菜と共にマッシュルームを贅沢に使ったソースは
甘みがあってまろやかで、ステーキやチキンの味を一層引き立てる。
マッシュポテトも良い感じだ。
デザートのイチゴのクレープはセクシーが美味しそうに食べる。
皿の縁にはチョコレートで書かれた“メリークリスマス”
感謝の印にチョコで皿にサインした。
僕らのメッセージ届いてくれたかな…。